1 インプラントのメンテナンスが必要な理由
インプラントは見た目も自然で自分の歯と同じように噛めるというもので、何らかの原因によって自分の歯を失うことになってしまった方にとってはとても魅力的な治療法です。
しかし、インプラントは一生涯入れば完璧というものではなく、定期的なメンテナンスがとても重要です。
そのメンテナンスを怠ってしまうと、最悪インプラントがダメになる事態にもなりかねません。
インプラントはそれ自体の値段が高額なうえ、健康保険が適応されない自由診療のため、治療にかかる費用は決して安いとはいえません。
せっかく埋め込んだインプラントを長持ちさせるためにも、日頃のメンテナンスは必要不可欠だといえます。
2 インプラントのメンテナンス
インプラントのメンテナンスの頻度は個人差がありますが、一般的に3ヶ月に1度程度を目安に行います。
インプラントに限らず、自分の歯であってもPMTCといって歯科医院で行う専門的なクリーニングは必須です。
PMTCとは『 Professional Mechanical Tooth Cleaning』の略で、歯科衛生士が器具やペーストを用いて歯面や歯周ポケット内部のバイオフィルムを除去することです。
バイオフィルムとは細菌が集合体となってできるヌルヌルした汚れのことです。
歯の表面にこのバイオフィルムが付着したまま放置してしまうと歯肉は炎症を起こし歯周病となります。インプラントの表面にもこのバイオフィルムは形成されるので、定期的なメンテナンスを怠るとインプラント周囲炎になってしまう恐れがあります。
インプラントはチタンという人体になじみがいい金属と、上部構造はセラミックやジルコニアで作られているので、虫歯になることはありません。
しかし、インプラントを埋入しているのは顎の骨でその周囲には歯茎があります。磨き残しなどがあるとインプラントの根元に歯垢(プラーク)がたまります。
そうすると、天然歯(ご自身の歯)と同じように歯周病菌によりインプラントを支えている周りの骨が溶けていきます。結果としてインプラントを支えている土台(骨)が無くなった状態になるのでインプラントはぐらつき、やがては抜け落ちてしまいます。
これがインプラント周囲炎です。
歯科医院で行われるメンテナンスは、主に以下のような手順で行われます。
口腔内の清掃状態のほか、歯肉の腫れや炎症、インプラントの動揺などの、インプラント周囲炎に見られる症状の有無の確認を行います。
さらに、インプラントと人工歯の連結の不具合や破損について、目視でチェックします。
異常が無ければ、歯の周りについたバイオフィルムを専用の器具を用いて落とします。
インプラントの種類によっては上部構造を外してクリーニングを行うこともあります。
他に、お口の中の状態をチェックした際、特に汚れがひどかった部分があれば、その部位を中心に、効果的な歯の磨き方を指導します。
特に、歯ブラシでは完全に汚れを落とすことができないため、歯間ブラシやデンタルフロス、ワンタフトブラシなどの、補助的な清掃用具の使い方を身に付けることが大切です。